

2025年4月4日、ダイネーゼ大阪がアジア最大級のフラッグシップショップとしてオープンするにあたり、オープニングイベントに、MotoGPレジェンド・ライダーであり、今年からダイネーゼ・グローバルアンバサダーに就任したダニ・ペドロサ選手が来日。
ダイネーゼ・ジャパンのアンバサダーであるレジェンドライダーの原田哲也さんと上田昇さんに、バイクレース界についてのライディングギアやマシンの進化などについて対談していただきました。

■プロフィール
ダニ・ペドロサ/Dani Pedrosa #26
1985年9月29日生まれ、スペイン出身
KTM Factory Racing Test Rider2001年から世界選手権125ccクラス、2004年から250ccクラス、2006年にレプソル・ホンダ・チームからMotoGPクラスに参戦し、2018年に現役を引退。
2019年からKTMのテストライダーに就任。
世界選手権デビュー以来、125cc 、250cc、MotoGPで通算54勝を記録しているレジェンドライダー。

■プロフィール
原田哲也
1970年6月14日生まれ、千葉県出身
1993年世界選手権250cc年間チャンピオン。
WGP通算表彰台55回と日本人最多の記録を持つ、日本が誇るレジェンドライダー。
2002年に現役を引退。当時のニックネームは「クールデビル」。

■プロフィール
上田昇
1967年7月23日生まれ、愛知県出身
1991年から2002年まで、世界選手権125ccクラスに参戦。
現在はレーシングチーム「TEAM NOBBY」の代表を務めながら、日本人ライダー育成などに力を注いでいる。
愛称は「ノビー (Nobby)」。
クラスは違えど、実は皆、同じタイミングでレースをしていた
上田昇(以降ノビー):みんな同じタイミングでレースしていたよね。
ダニ・ペドロサ(以降ダニ):そうだね、クラスは違ったけど一緒だった時がありましたね。
ノビー:ダニは125ccで、テツヤは250ccだった?いや、500ccだったかな?
原田哲也(以降原田):僕は250ccクラスに戻ったときだったよ。
ダニ:僕は125ccに参戦を開始した年で、ヒロシ(青山博一)と、カトウ(加藤大治郎)は250ccで「テレフォニカ・モビスター・ホンダ」でチームが一緒だったんだ。
原田:2000年から2001年ごろだよね。
ダニ:君たちがいくつかの記録を作っていたから、テツヤのことはよく覚えている。僕が250ccに上がったとき、カトーとテツヤの当時の記録がまだ更新されていなくて、それを超えようといつも挑戦していたからね。
原田:うん、大ちゃん(加藤大治郎)は本当に強かった(笑)
ダニ:ブルノだっけ? チェコのアウトモトドローム・ブルノサーキット。テツヤの出したコースレコードがすごく速くて、250cc初年度の僕では、あのタイムを超えるのは不可能だったよ。
ノビー:いや、ダニも持っていたでしょ?125ccの世界最速タイムとか。鈴鹿で出したのはすごかったよ。
ダニ:あのサーキットは特別だから。125ccでしか走ったことがないけど、いいサーキットだよね。
原田:そうかそれは残念。500ccとかでも走ってみてもらいたかったな。

レースシーンにおけるダイネーゼの進化
ノビー:今回、ダニが19年ぶりにダイネーゼに戻ってきたんだけど、テツヤも現役の頃にはダイネーゼを着ていて、また3-4年くらい前に戻ってきたということで、長年レースに携わり、現場で戦ってきたライダーとして、レーシングギアの進化、特にダイネーゼの進化について話していきたいと思うんだけど、1番大きな進化ってなんだと思う?
ダニ:僕が感じた一番大きなイノベーションは、初めてエアバッグを見たときかな。デザインは正確には覚えていないんだけど、外側に膨らんだことを覚えてる。
ノビー:外側?
ダニ:そう、125ccのライダーが転倒したときに、そのエアバッグが展開されるのを見たんだけど、すごく衝撃的だった。他のどのブランドよりも、ずっと早い段階でエアバッグが導入されていたよね。

2007年に125ccクラスのライダー、シモーネ・グロツキーとマイケル・ランセダーが、初めてDaineseの電子制御式エアバッグシステムを導入した、スーツとプロテクションで参戦。シモーネ・グロツキーが転倒した際に、初めてエアバッグが展開された。

バイク用ワイヤレス式エアバッグ「D-air®」の歴史
ノビー:ダニは、これまでいろんなタイプのエアバッグを使ってきたよね。
ダニ:僕のキャリアの中でも、エアバッグは本当にたくさん改良されてきたよ。最初は首や肩のあたりだけを保護していたけど、そこから胸にも広がって、今では腰のあたりまで膨らむようになっているよね。保護範囲がどんどん広がっている分、ボンベをどこに配置するかとか、技術的に難しい部分も増えてきていると思う。それに、背中やウエスト周辺は、これからもっと改良されていくんじゃないかな…って感じている。そういった複雑な仕組みを完全にワイヤレス化して、さらにストリート用にも展開しているというのは、本当にすごいことだと思うよ。
原田:僕は新しいSmart Airにはものすごく興味がある。ツーリングにすごく良さそうだなって、スキあらば試着しようと目論んでいるんだ(笑)だって、僕の時代はエアバッグが無かったし、今もD-airを搭載したスーツを着ているけど、転ばないからエアバッグはまだ体験したことないんだよね(笑)
ノビー:そうだよね、現役時代はまだなかったよね。
原田:そう、だから僕がダイネーゼの進化で驚いたのはブーツです。
ノビー:ブーツ?
ダイネーゼのブーツインスタイル
原田:98年か99年頃にダイネーゼを着ていたんだけど、ブーツインスタイルの出始めた頃だったんだ。その当時は長いブーツを半分に切ったような、ただ短いだけのもので、プロテクションはほとんどなかったんだよね。

ノビー: そういえば、そうだったね。ブーツインスタイルの登場は、ダイネーゼがスーツとブーツを一体化させることを目指して開発したもので、不要なものに足を引っかけて足首がねじれたりするリスクを減らすために誕生したスタイルだったんだよね。

なぜダイネーゼは、ブーツをスーツの中にいれるのか?
原田:でも、3年ほど前からまたダイネーゼを着るようになって、ブーツがまるでスキーブーツのようなプロテクションに進化していたことに驚いたよ。
レザースーツは当時からしっかりしていたし、グローブもすでにカーボン素材が使われていたから、そこまで大きな変化は感じなかったんだけど、ブーツの進化には本当に衝撃を受けたね。
ダニ:そうだね。僕も足首に大きなケガをしてからは、ブーツには特別なリクエストをするようになったんだけど、特に足首のプロテクションって本当に難しいんだよね。
足首は、バイクの挙動を感じ取ったり、ステップワークをするための繊細な感覚が求められる部位だけど、転倒時には大きな衝撃を受ける可能性があるから、保護性能も必要になる。でも、プロテクションが高すぎると、足首の感覚が損なわれてしまう。そこのバランスが本当に重要なんだけど、ダイネーゼは絶妙なバランスでそれを実現してくれている。大きなクラッシュで特にケガをしやすいのは手と足だけど、グローブやブーツがしっかり保護してくれれば、すぐにレースへ復帰できる。それはライダーにとって本当にありがたいことだと思う。
ダイネーゼのスーツとグローブの優れた点は、昔から変わっていない。そこにエアバッグのような新しいテクノロジーが加わっても、その良さが損なわれないのが、ダイネーゼのすごいところだと思う。フィッティング、動きやすさ、美しさ――どれも変わらないまま、さらに安全性が向上している。

原田:フィッティングで思い出したけど、98年に初めてダイネーゼでレザースーツを作ってもらったとき、一発で完璧なサイズに仕上げてくれたんだ。初めての採寸だったのに、ぴったりで一切の手直しが必要なかった。これは本当にすごい技術だと思ったよ。しかも、98年ってカンガルーレザーがレザースーツに初めて採用された年だったんだよね。当時、僕とビアッジ(マックス・ビアッジ)、それにバレンティーノ(バレンティーノ・ロッシ)の3人だけがその素材を使っていて、年間2着しか支給されなかったんだ。
ノビー:年間で2着だけ? それ、転んだらその都度直して使うってこと?
原田:そう、その都度修理してもらってたよ。当時はまだカンガルーレザーは高価だったからね。

ダニ:あ!そういえば、この頃からレザースーツについていたスポンサーとかのワッペンがプリントに変わったんだよね。
原田&ノビー:そうだ!!!
ノビー:ダニよく思い出したね、すごい記憶力(笑)
ダニ:プリントになってから軽くなったこともあるけど、ものすごくスムーズになったからよく覚えている。
原田:確かに。そのおかげで空力もかなり良くなったよね。
ノビー:ダイネーゼのレザースーツって、空力性能がものすごくいいんだよね。
ダニ:プロテクターの形状自体も空力を意識して作られているから、性能も高いし、すごく動きやすい。
ノビー: 今じゃそれが当たり前になっているけど、この時代からワッペンがプリントに変わったんだね。
原田:ワッペン自体はプリントになっていたけど、当時はそれを縫い付けていたもんね。そんな時代があったな、と(笑)
ノビー:振り返ってみると、本当にすごいスピードでいろんなことが進化しているよね。ダイネーゼって、現役ライダーがレースで使っているレザースーツやグローブ、ブーツの技術を市販品にも反映させているから、一般のライダーもその恩恵を受けられるっていう、その企業努力が本当にすごいと思う。ということで、次はレースについて話していきたいと思うんだけど、現役の頃のこと、テストライダーになってからなど…、

【Part 2】MEET THE SAMURAI
MotoGP引退後、テストライダーとしてのダニ・ペドロサ』
KTMの躍進には、ダニのテストライダーとしての貢献。その苦労した点などもお話いただきました。
※記事内の価格、情報は全て作成時点のものです。最新の情報は各ブランドページをご確認ください。
株式会社ユーロギア
記事作成 ユーロギア編集部
「モーターサイクル」「スキー」「自転車」等、アクティブスポーツを楽しむ方のためのセーフティギアを取り扱い。海外の複数スポーツブランドの総代理店として、全国に専門店を展開中。他、これらのスポーツを楽しむためのイベント開催も。
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